オズワルドさんに漂うラスボスっぽい雰囲気たまんねえなうへへと考えていたらつらつら書いていたお話

オズの国の王子であるオズワルドの元に、革命軍の魔道部隊が押し寄せる。革命軍によりオズの城は制圧状態、オズワルド自身も完全に包囲状態となり絶体絶命の状況だが、オズワルドは不敵な笑みを浮かべて迎え撃つ。

タイトルの通りです。
直前に描いたこのイラストを脳裏に浮かべながら的な。

話としては重いと言うか、何故か追われる身になっています。
姫とのいちゃつき等一切無いのでご注意下さい。


「……へぇ」
 執務室で最期の支度を整えるオズワルドの目前に、魔道部隊が押し寄せる。城内はほぼ全て革命軍によって制圧され、残るは自分の居るこの執務室のみである。
 間もなく発せられるであろう、突撃の合図と共に、自分の腹心――尤も“元”であるが――らが押し寄せるだろう。
「それにしても、僕を殺したところで何があるって言うんだろうねぇ? 魔法も使えないのに、ね?」
 机上にある、今はもう繋がらない複数のトランシーバーに向け、自嘲気味な笑顔を向けながら独りごちる。
 ドア一枚隔てた外、異様に静かな様子に、その時が近いことを感じる。
 部屋をぐるりと見渡し、「あー、お腹が空いたなぁ」と大げさに声を出す。外からの反応は何もない。
 窓は閉めている。戦火による硝煙の臭いがきつく、気分が悪くなる。
(魔法の爆発ってのは、何ともあっけなくて好きじゃない)
 美しい理論・設計に基づき算出された結果をこよなく愛するオズワルドにとって、魔法は驚きの対象であると共に、どこか好かないものでもあった。
(そんなことを考えたら、大魔法使い兄弟に怒られそうだね)
 音信不通となった仲間を思った時、ふいにドアがノックされた。
 こん、こん、こん。
 最期を遂げる音にしては、いやに丁寧で、軽い。
(最後の晩餐も、こーんな穏やかさだったのかなぁ)
 どこで足を踏み外してしまったのか、歯車が狂ってしまったのかは最早分からない。その結果が、今、自分が置かれている状況なのだから。
(でも僕って、派手好きだからね?)
 にやりと口元の笑みを強めると、「はいはーい。鍵は開いてるよ」といつもの声色で応える。間もなく、一人の男――大臣の一人で特に忠誠を誓っていた――が入ってくる。
「失礼、致します」
「どうぞどうぞ。どーしたの?」
 僅かに開いたドアの隙間から、多数の物々しい気配を感じる。それを悟られないようにか、大臣は部屋にそそくさと入ると、素早くドアを閉めた。
「ちょうど良いところに来てくれたねぇ。制作に没頭しちゃってて、ご飯食べ損ねちゃっててさ。何かある?」
「オズワルド様……」
「……なーんて、冗談は通じない状況かな?」
 ノイズがうるさい複数のモニタに目をやれば、焼け焦げた城内ばかりが目に付く。
「……同胞同士、争うなんて馬鹿馬鹿しいと思うんだけどねぇ」
「仰るとおりでございます……」
「状況、どんな感じかな?」
「はっ……」
 オズワルドの質問に、大臣は口ごもる。
「……聞かなくても分かってるよ。君は、何をしにきたのかな?」
 机の上に散らばったものを机の中にのんびり仕舞いながら、質問を変える。
(可哀想に)
 目の前の大臣は、自分に特に強く忠誠を誓っていた。故に、今は捕虜に近い状態なのだろう。
 自分の返答次第では、自分もろとも消し屑……そう思えば、大いに同情の余地はある。
「……オズワルド様……私からのお願いです……どうか降伏を……」
 絞り出すような大臣の声に、ははっ、とオズワルドは笑って返す。
「っ、オズワルド様……!」
「ああ、ごめんごめん。君さ、緊張しすぎ。いつも言ってるでしょ、リラックス、リラックス、って?」
 机から立ち上がると、両手を広げて大臣に近付く。ドア越し、殺意が強まる。
(気が短いねぇ)
 壁に掛けてあったお気に入りの絵画に触れながら、端的にそう思う。
「んー……今更降参したところで、正直状況は変わらないからね?」
「ですが……」
「君はさ。僕に降参して欲しい?」
 目線は絵画のまま、大臣に問いかける。
「……私、は……オズワルド様には少しでも、長く生きて頂きたい、と……」
 大臣の言葉に、オズワルドは微かに目を細める。
「うん、じゃあそうしよっか」
「……! オズワルド様っ……!」
「たーだーし!」
 かかとを起点にくるりと回り、大臣に向かい合いながら、
「どうせなら派手に生き長らえるとするよ。それくらいは許してよね?」
(ごめんよ)
 もう届かないその言葉を心の中で唱えると、絵画を乱暴に壁から落とす。
「イッツ・ショータイムだ!」
「オズ……」
 壁に隠された仰々しい装飾のボタンを拳で打つと、四方の壁が大きく動き、隙間なく配置された無数の銃が姿を見せる。
「しゃがんで!」
「……っ!」
 オズワルドの声に大臣が反射的にしゃがむと、堰を切ったように銃口から一斉に火が放たれる!
 ドドドドドドドド!
 耳をつんざく銃声が紡がれ、ドア、壁、見境なく蜂の巣にしていく。銃声にかき消されるように、悲鳴に似た声が断続的に聞こえる。
「……!」
 無数の銃弾が空を切り裂き、飛び交う閃光と煙で一瞬にして五感が塞がれる。
 しかしオズワルドにとって、それは何の障害でもない。自身で設計した弾道を避けるように地を這い、頭を抱えてしゃがみ込む大臣に辿り着く。
 何も言わず――尤も何か言ったところで聞こえやしないが――震える大臣の手を強く引き、先ほどまで腰掛けていた机へとゆっくり向かう。
「用意して! 良かったよねぇ! 隠し通路!」
 銃声にかき消えないよう、大臣の耳元で大きな声を出すと、椅子の下に隠しておいたハッチをこじ開ける。奈落へと続くような、闇に包まれた脱出口が姿を現す。
「おっ、おずわっああああー!」
 目を白黒させた大臣を、問答無用で先に放り込む。
「……そろそろかな?」
 やがて計算通りのタイミングで、銃声がぴたりと止む。轟音がほぼ一瞬で止み、無数の薬莢が地に落ちる音がからからと響く。
 ほぼ一点に向けて集中砲火を行った結果、大きく空いた穴。視界を塞ぐ硝煙が、穴から外へと流れていく。
「……そこにいるのは魔道隊長、かな?」
 視界が晴れるにしたがって、シルエットのように浮かび上がったのは、防護壁で段幕から身を守っていたであろう、魔道部隊隊長の姿だった。
「オズワルド様……ああ、なんと言うことを……」
「やあ隊長! それは僕の台詞だよ!」
 ぱっと満面の笑みを浮かべながら言う。
「ご覧よ、この城の有様を! ユメクイに破れるならいざ知らず、さ!」
「この期に及んで何を……!」
「ああ、今のは正当防衛さ」
 隊長の背後から、銃弾を逃れた隊員が続々と姿を現す。
(ざっと2部隊……かな?)
 腕を組み、何かを考えるように顔を傾げる。
「で、君は僕に何を?」
「オズワルド様……」
「僕を捕まえにきたのかな?」
 返事の代わりに、隊長は手にした杖をかざす。
「んー、僕としてはもう少しくらいは対話したかったところだけれど……まぁ別に構わないよ」
 杖の切っ先、いつどんな魔法が飛び出すか分からないそこから、ゆっくりと隊長の目へと目線をずらす。
「――ただし、僕を捕まえられたらね?」
 にやり、と笑みを深めると、計算通りのタイミングで、今度は視界を覆うほどの閃光が四方の壁からほとばしる!
「……っ!?」
 突然の光を予見できる筈も無く、魔道部隊は大きく体勢を崩す。
(じゃあね)
 部隊が怯んだ隙に、先ほど開けた脱出口へと飛び込む。急速に世界が遠ざかるのを感じながら、あれよあれよと城を滑り降りて行く。
 間もなく、遙か頭上から大きな爆発音、同時に振動が伝わる。
「おおっと!」
 靴底を側面に押しつけ減速する。間もなくまばゆい世界が広がり、オズワルドの体が丸ごと外界へと晒される。
 どす、と軽くふらつきつつも足から着地すると、先に滑り降りていた大臣がお尻をさすりながらうずくまっていた。
「ふー、初めてのジェットスライダーはどうだったかな?」
「う、うう……」
「ああ、言い忘れてたけど、お尻から着地するとすんごい痛いから」
 頬を手の甲で拭うと、先ほど部屋で包まれた硝煙なのか、すすがこびりついた。
「さ、ほら」
 ようやくのろのろと状態を上げた大臣に、手を差し出す。
「うう……オズワルド様……」
「ほーら、早く!」
 大臣の手を掴み、立ち上げたと同時に遙か頭上から爆発音が響く。大臣が、ひいっ、と小さな悲鳴を上げる。
「……長かったねぇ、この城も」
 目を細め、赤く燃え上がる城を眺めながら、大臣に聞こえない程度の声で独りごちる。
「あのお城、僕が色々リフォームしたからねぇ。暫くは盛大だと思うよ?」
 にやりと笑みを浮かべると、また別の箇所で爆発が起きる。
(こんなことの為に設計した訳じゃないんだけどなぁ)
 一際大きな炎が上がったところで、「……さ、行こうか」
「お、オズワルド様……どこへ……」
「さあ? ムーンロードの気の向くまま、お気楽な旅の始まりさ!」
 かつて仲間達が僕の元へやってきたように。
 そして、“彼女”が僕のところへ来たように。
「……とは言え、お供が君一人って言うのも、何とも心細いけれどねぇ」
 ははっ、と笑いながら言うと、それまで頼りなさそうにしていた大臣が姿勢を正す。
「……こうなってしまった以上、最期までオズワルド様にお供いたします」
「おっ! 心強いねぇ! 助かるよー!」
 よろしくね、と背中を叩き、「じゃ、早速進もっか」
 オズワルドの象徴とも言える、緑の玉の付いた杖を手にし、二人は足早に、森へと姿を消した。
(さよなら)
 心の中でだけ、別れを告げて。

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